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ユーザー実務研修

ユーザー側の業務を経験することにより、ユーザーの視点も理解した上でシステム開発などの業務を進められることを目的としています。

インフラアーキテクチャ部 井戸田 彬

2015年竣工の石炭船『新矢作丸』

2014年6月から2016年6月まで、商船三井(MOL)の専用船部(現 石炭船部)に出向し、運航管理業務に従事しました。出向するまでは、MOLをメインユーザーとした小規模アプリケーションの保守と開発を担当していました。2年間の出向を通して、船の運航に関わる業務や組織運営の他、MOL社員の意識、価値観を知ることができたことは、現在の対ユーザー業務に役立っています。

所属した部署と運航する船について

出向先では、国内電力会社の発電所向けの石炭(一般炭)を主要貨物として運航していました。
運航していた船の種類は、一般的に「ばら積船(バルカー)」と呼ばれる船で、その中でも「幅広・浅喫水船」という、一般的な規格のサイズとは異なった、水深の浅い港でも貨物を多く運べる特徴の船を運航していました。
石炭を積む港は、オーストラリアやインドネシア、中国、ロシアで、そこから揚港となる国内の発電所に向かいます。
電力の安定供給と安全運航を目的に、国内船社が所有する船で運航するという契約が多く、MOLが所有する船を主に利用していました。

業務について

石炭船部は、運航担当は顧客ごとに分かれ、営業担当と一体で営業を行っています。運航担当は、営業補佐として、顧客に伺い、運航関係(船や港)の説明の他、契約や運賃率作成の補助を担当します。顧客の機微を感じ、それを航海に反映させるといった、業務に付加価値をつけることは、難しくもありましたが、現在の対ユーザー業務で活かすことができています。
実際の運航業務では、航海に必要な書類、情報の整理と、各種費用、請求書の手続きが主な業務です。数隻の運航を担当するので、複数の小規模プロジェクトを行っている気分です。
出向した年にMOLの基幹システムを一新したので、部内のシステム担当として当社との中継役を務めたほか、新しいシステムのルールについて周りに説明する他、PCやOfficeソフトの質問にも答えていました。

現場主義

専用船部は「現場主義」として、顧客の事情を知り、港の特性を知り、発電所の特性を知り、地域の特性を知った上で、より良い提案、より良い運航を目指すことをひとつの目的としています。運航を担当する船が揚港に着けば、可能な限り港に向かい、発電所の方(港湾管理者)や代理店の方、安全監督(MOLの元船長の方)や船員と会話して、運航の質の向上を目的として打ち合わせを行っていました。
船では、次の運航の確認や打ち合わせや、MOLの派遣監督官の方、船長や航海士の方と一緒に、デッキやエンジンルームを見回り船の状況を確認していました。船員との打合せは、船長を始め、船員はフィリピン人ですから、全て英語です。最初は片言ですら話せませんでしたが、船員さんとのコミュニケーションを通して、もっと会話できるようになれたら素敵だろうなと、勉強するきっかけにもなりました。その結果、会話をスムーズにできるとまでは言えないのですが、英語に対する拒否反応はほぼなくなりました。また、現場に向かうことで、お互いを身近に感じることで、お互いに対応しやすくなったこともたくさんあり、今後見習うところと感じています。

出向中の感想

まず、驚いたのは、扱うもの全ての規模が大きく、且つ速度が速いことです。
パナマックスの最大積載量は、一番小さいサイズでも約6万トンで、10トントラック 約6千台分、2トントラック約3万台分です。大きさは、私が担当していた船の場合、全長234m、幅は38m、深さが20m。六本木ヒルズが238mですから、まさに動く不動産です。これだけを見ても、1航海の運送料、必要経費の規模の大きさが想像できると思います。
船が次の航海に入るときは、指定された期間に着く、ちょうどいい位置にいる必要があります。ただし、船は遅れてしまうと、遅れを取り戻すことが非常に難しいです。また、次の航海が決まっていない場合、急いで次の航海を探さなければなりません。当時はマーケットの低迷で貨物も少なく、船の貸し借りを交渉する引合い担当者が、航海が完了する直前まで採算分析、交渉をする場合も少なくありませんでした。前の航海完了直前まで交渉が続くと、航海が決まった後の手続き時間が1分1秒を争うときもあります。船の動静を常に把握して、引合い担当者へスムーズに情報を渡せるように準備を把握することも必要でした。


海運を取り巻く大きなニュースも常にあります。私の出向期間中も、新パナマ運河の開通、バラスト水排水条約関連の対応、中国の排気ガス規制など多くのニュースがありました。刻々と変化する状況のなかで、採算向上するための最適解を一丸となって考える体制は、当社でもあるべき姿だと感じました。部内のみなさんも大変気さくで、2年間とても楽しく過ごせました。最初の歓迎会での「家族のような部署」という言葉がまさにあてはまり、今でも強く心に残っています。